目次

名人が異動する

春から、名人は工場の設備部門へ。決まったことを、情シスはいちばん後に知った。

票番号12-031
報告者情シス課長
件名インフラ担当の異動(4月1日付)に伴う業務の組み替え
状態対応中

FIRST人事の紙は、3行だった

インフラ担当 4月1日付 工場 設備部門へ。
あとは、日付と判子がひとつずつ。

この会社の情シスで、いちばん多く名前を呼ばれてきた人の異動でした。

SCENE先週から知っていた背中は、先週と同じだった

12月の半ば、新しいリーダーは情シス課長に会議室へ呼ばれました。机の上に、人事の紙が1枚。課長はそれを、こちら向きに置き直しました。

「工場長からの希望だそうです。新しいラインの機械とシステムの、両方が分かる人がほしいと」

3行を読み、もう一度読む。「……それ、いつ決まったんですか」

「11月の終わりに。本人には先週、人事から」

席に戻る。インフラ担当は、いつもの姿勢で画面を見ていました。この情シスで、名人と呼ばれてきた人です。止まったサーバーを15分で戻し、工場が困れば真っ先に名前が出る。先週から知っていた人の背中は、先週と何も変わっていませんでした。

この春まで、新しいリーダー自身もヘルプデスクの席にいました。困ったら名人に聞く。聞けば、たいてい15分で片付く。この2年近く、そのやり方を少しずつ窓口とカードと台帳に移してきたつもりでした。それでも3行を読んで最初に浮かんだのは、「名人がいないと困る」でした。

その日のうちに、窓口に第二工場の事務から連絡が入りました。受けた窓口当番が、受話器を手でふさいでこちらを見ます。「名人さん、春からこっちに来るって本当ですか、って」

7人の手が、止まりました。

人事の発表より先に、話は工場から届いてしまった。その場で全員をホワイトボードの前に集めると、インフラ担当は短く言いました。

「4月から工場です。設備のほうに行きます」

それだけでした。誰も、口を開かない。沈黙を破ったのは、4月に入った中途のメンバーでした。前職は大手のSIer。机には、付箋をびっしり貼った分厚いITILの本が置いてある。

「だから、全部書くべきだったんです」

責める調子はありませんでした。ずっと前から分かっていたことを、確かめるような声です。11月に工場で使われなかった200ページの仕様書のことは、誰も口にしませんでした。それでも、「だから」の一語は刺さりました。だから、の向く先は過去です。前のリーダーが組んだ型と、それを4月から受け継いできた自分の9か月。

答えの代わりに、名人は立ち上がってマーカーを取りました。説明の前に、まず箱を描く。昔からの癖です。四角を3つ。ラインの機械、中継サーバー、出荷ラベル。その下に、横に長い四角をひとつ。工場のネットワーク。箱と箱を線でつなぎ、キャップを閉めてから言いました。

「書けるのは、この箱と線までです。線が切れる前に、どこに何が先に出るか。それは、書いても伝わる気がしません」

ラインの機械6月の新しいライン
→
中継サーバー触ったのは名人だけ
→
出荷ラベル止まると出荷が止まる
|||
工場のネットワーク
図1 名人がホワイトボードに描いた箱。中継サーバーは、どの箱にどのラベルを出すかを、ラインの機械から受け取って出荷ラベルに渡す。6月に新しいラインと一緒に入り、まだ名人しか触ったことがない。

集まりが終わってから、申し送りノートを開きました。前のリーダーが経営企画へ移るときに残した引き継ぎ資料です。従うべき原則、ガバナンス、バリューチェーン、管理プラクティス、継続的改善。ITILのバリュー・システムの5つの部品で組んだ目次の余白に、新しいリーダーは4月から毎月1ページずつ書き足してきました。

名人が来られない日の備えなら、1年目に作ってあります。共通の窓口、カード、台帳、停電のときに戻す順番の1枚。けれど、どのページをめくっても、名人がもう来なくなる日の段取りは見つかりません。

経営企画の島は、同じフロアの反対側。歩けば1分です。席を立ちかけて、座り直しました。10月、来年度の要望を持っていったとき、前のリーダーは「今は判断できない」と言った。あちらの席に座った人に、こちらの席のことを聞きに行くのは、違う気がしました。

12月のページの余白は、白いままでした。

4月まで、3か月半。名人をもう一人育てるには短すぎて、何もしないでいるには長すぎる時間です。

BEHIND同じ3行を、3つの席が別々の日に知った

うしろを見る

本人は先週、新しいリーダーは12月の半ば、チームは工場からの電話で。同じ紙の3行でも、知った順番が違うと、うしろの子は別の顔をしています。

子は人ではなく、席につく。言葉がきつくなるのは、うしろの子が何かを怖がっているとき。6体の紹介は地図に

情シス
新しいリーダー

「……それ、いつ決まったんですか」

はつみみ初見

怖いのは自分の席を通らないところで、席の中身が動いていくこと

情シス
インフラ担当(名人)

「4月から工場です。設備のほうに行きます」

ぽつん面子

怖いのは呼ばれなくなった席に、自分の居場所が残らないこと

情シス
中途で入ったメンバー

「だから、全部書くべきだったんです」

くうらん懸念

怖いのは書いていないところで事故が起き、誰かが責められること

せきのこ ── 席のうしろの、小さな子たち

USE 1名人の形のまま、穴を埋めようとしていた

次の日、ホワイトボードに「名人の仕事」と書いて、その下に並べ始めました。サーバー、ネットワーク、工場、ベンダーとの段取り。10行も書かないうちに、手が止まる。書くほど、それは仕事の一覧から、一人の人の説明に変わっていきます。この説明に当てはまる人を、3か月半でもう一人育てる。書いた時点で、無理な計画でした。

横から、中途のメンバーが付箋だらけの本を開いて見せました。開いたページの見出しは「後継者計画」。今の担い手が抜けても仕事が続くよう、次の担い手を前もって育てておく、という項目です。その付箋にだけ、小さく日付が書いてありました。入社した週の日付です。

「4月に、ここに貼りました。前の現場で、手順のない切り替えがあったんです。翌日、いちばん若い担当が客先で頭を下げていました。書いてなかったのは、そいつのせいじゃないのに」

正しい、と新しいリーダーは思いました。名人の頭の中にしかないものは、4月に名人と一緒に工場へ行く。書いてさえあれば、残る。8か月前から、それに気づいていた人がいたのです。ただ、名人の頭の中には、この会社での何年分かが入っている。3か月半で全部を書き出すのは、名人をもう一人育てるのと同じくらい、届かない計画でした。

そこで、書く向きを変えます。「名人の仕事」を消して、「この情シスが回している業務」と書き直す。主な業務を20個。横に7人の名前。一人で回せる人に◎、補助ならできる人に○。全員で埋めていくと、1時間で表ができた。

自分の行は、名人が自分で埋めました。ほとんどが◎。けれど、勤怠の端末と会議室の映像機器には、○しか付けていません。「そっちは、もう窓口当番のほうが速いです」。本当のことしか言わない人の、本当の印でした。

表にすると、景色が変わりました。名人の列は、たしかに◎だらけです。それでも、名人のほかに◎が一人もいない行は、20のうち3つしかなかった。夏の2か月、育休でいなかった名人の代わりに台帳と土台を回した人たちの◎が、表のあちこちに付いていたのです。

表を眺めていた名人が、ホワイトボードの隅に残っていた昨日の箱を指さしました。「あっちの箱と線は、情報と技術。こっちの表は、組織と人材ですね。4つの側面のうち、自分が書けないと言ったのは、こっちのほうでした」

作ってみる中継サーバーの行を、スキルの表に書き足す

スキルの表で、名人のほかに◎が一人もいなかった3行のうち、いちばん急ぐのは新しいラインの中継サーバーです。止まれば、新しいラインのラベルが手書きになる。この1行を具体にします。誰が、どうやって、いつまでに。

スキルの表 新しいラインの中継サーバー
2人目

土台の知識がある人なら、3か月で名人の隣から始められる。手が空いている人を選ぶと、土台から教えることになる。採用を待つと、名人と一緒に作業できる期間がなくなる

埋め方

書けるところはカードにする。ただ、中継サーバーの癖は6月から名人の手の中で育ってきた。3か月で全部は書けず、読んだだけでは手が動かない。隣で見て、自分の手でやるのがいちばん速い

いつまでに

期限は日付より、確かめる場面で決める。訓練で一人でできれば、表の○が◎に変わる。日付だけの期限は、確かめないまま過ぎていく

名人の評価

育てた仕事が評価に入らなければ、教えるほど自分の席が消える気がする。1年目に名人が打ち明けたのと同じ形が、もう一度できてしまう

1行に4つの欄。どれも、表の上で決まった。名人の頭の中だけに置いてあるものは、この行にはもうない。

使ってみて分かったこと

名人の形のまま穴を埋めようとすると、名人をもう一人探す計画になります。業務の形に分けると、穴の大半はもう埋まっていて、残りは3行でした。3行なら、3か月半で手が届きます。

ITIL›バリュー・システム›管理プラクティス›ITIL 4:一般管理›要員およびタレント管理
No.14要員およびタレント管理Workforce and talent management

目的:事業目標を支えるために、適切なスキルと知識を持つ人を、適切な役割に置く

名人の穴を、業務の形に分けて2人目を置く

組織と人材organizations and people
  • 表の持ち主:新しいリーダー。月に一度の見直しで更新する
  • 2人目:一人しか回せない業務ごとに1人。中継サーバーは中途のメンバー
  • 名人:3月まで、2人目と並んで作業する役。育てた仕事を評価に入れる
情報と技術information and technology
  • スキルの表(7人×主な業務20個。◎一人で回せる/○補助ならできる)
  • 要員計画(4月以降の人数と、足りない力の埋め方)
  • カードと台帳(書ける分は、ここに移す)
パートナーとサプライヤーpartners and suppliers
  • ネットワークの保守会社:回線の設定は、保守契約で外の力も借りる
  • 人事:評価の基準と、4月以降の採用の相談
バリューストリームとプロセスvalue streams and processes
  1. 業務を書き出す
  2. 回せる人に印
  3. 一人だけを探す
  4. 埋め方を決める
  5. 並んで作業する
  6. 表を直す
使えている目印
  • どの主な業務にも、回せる人が2人以上いる
  • 評価の面談で、カードを書いた仕事と人を育てた仕事が、速く直した仕事と並んで話される
図2 要員およびタレント管理の解剖図。目的のまわりに、ITILが各プラクティスの手引きで使う4つの側面を置き、この会社の具体を書き込んだ。

1年目では 第2話 再起動の名人 で出会ったしくみ。

USE 2噂のほうが、人事の発表より先に工場へ着いた

その週から、中継サーバーの前には椅子が2つ並ぶようになりました。名人がホワイトボードに箱を1つ描くたびに、中途のメンバーのノートが1ページ増えていく。

「そこは、書かなくていいです。触ればわかるので」

「書いておきます」

そんなやりとりが、何度も聞こえてきました。新しいリーダーは、止めませんでした。どこまで書けば足りるのかは、誰にも分からない。分かるのは、2月の停電の訓練で2人目が一人で手を動かしたときです。

そのあいだにも、話は工場の中を回っていました。電話が鳴る。新しいラインの担当からです。誰より早く手が伸びたのは、新しいリーダーでした。ヘルプデスクの席にいたころからの癖で、電話が鳴ると、考えるより先に受話器が耳にある。

「名人さんがいなくなったら、止まったとき、誰に電話すればいいんですか」

「大丈夫です。4月からも、何も変わりませんから」

受話器を置いて、気づきました。変わらないはずがない。4月から、ラインが止まっても名人は来ません。何も変わらないと聞いた工場は、何も備えない。安心させるつもりの一言が、いちばん大きな変化を隠していました。

次の日、同じ担当に電話をかけ直しました。「昨日のは、間違いでした。変わります。何が変わるのかを、説明させてください」

電話の向こうが少し黙って、それから「そのほうが助かります」と返ってきました。

情シスの中でも、窓口当番が小さな声で聞いてきます。「名人さんがいなくなって、私たちで工場を回せるんでしょうか」。人事に相談すると、返事は決まっていました。「正式な発表は1月の定例です。それまでは内々に」

1月まで待つのは、やめました。異動を決めたのは人事でも、異動で何が変わるかを伝えるのは、変わる場所のいちばん近くにいる席の仕事です。待っているあいだに、誰がどの順番で知るかは、噂が決めてしまう。

最初は、名人と二人きりの会議室でした。異動で何を失って、何を得るか。少し考えてから、名人は指を折って答えました。

「失うのは、工場から直接かかってくる電話。サーバー室の鍵。この島の、窓際の席」

それから指を開いて、「得るのは、ラインの機械を中から見られること、ですかね」

言われたとおりに、関係者の分析表の1行目へ書き写しました。2行目はチーム。失うのは、困ったら名人に聞けばいいという逃げ道で、得るのは、自分の名前で◎を付けられる業務。3行目が工場です。失うのは、名人に電話すれば来てくれるという安心。それなら工場には、4月からの窓口と、2人目の名前を一緒に届けなければならない。行を足すたびに、誰に、どの順で、何を添えて伝えればいいかが見えてきました。

チームには、名人のいる場で伝え直しました。失うものと得るものを、名人が自分の口で言う。聞き終えた窓口当番が最初に口にしたのは、「私の◎、どれから増やせばいいですか」でした。

使ってみる名人の異動を伝える段取りを並べる

人事の正式な発表は1月。けれど噂は、もう工場に届き始めています。誰に、どの順で、何を添えて伝えるか。

先にやるものから順に押してください。

伝える順番は、失うものの大きい順だった。本人、チーム、工場。人事の発表の日を待っていたら、この順番は噂が決めていた。

使ってみて分かったこと

変化を受け止めてもらう仕事は、人事に預けられませんでした。何を失うかは、失う人の席の近くにいる者にしか聞けないからです。分析表を書くと、伝える順番は、失うものの大きい順になりました。

ITIL›バリュー・システム›管理プラクティス›ITIL 4:一般管理›組織変更の管理
No.7組織変更の管理Organizational change management

目的:変化の「人の側面」を扱い、組織の変更を円滑に成功させ、効果を長続きさせる

異動を、失うものと得るものから伝え直す

組織と人材organizations and people
  • 推進役:新しいリーダー。人事の発表を待たずに、伝える順を決める
  • 名人本人:最初に聞かれる人。工場への伝え方も一緒に決める
  • 工場のラインの担当:旧いやり方を終える日を一緒に確かめる
情報と技術information and technology
  • 関係者の分析表(誰が何を失い、何を得るか)
  • 伝える計画(誰に、いつ、何を、誰の口から)
  • 連絡先の一覧(3月31日で名人あての直接の連絡を外す)
パートナーとサプライヤーpartners and suppliers
  • 人事:正式な発表の日と文面をそろえる。伝える役そのものは、情シスが持つ
バリューストリームとプロセスvalue streams and processes
  1. 失う・得るを書く
  2. 本人と話す
  3. チームに伝える
  4. 工場に伝える
  5. 並んで作業する
  6. 旧方式を終える
  7. 逆戻りを見る
使えている目印
  • 4月以降、工場からの連絡が、名人あての電話から窓口へ移っている
  • 異動を知った順番について、どの席からも「聞いてない」が出ない
図3 組織変更の管理の解剖図。目的のまわりに、ITILが各プラクティスの手引きで使う4つの側面を置き、この会社の具体を書き込んだ。

1年目では 第7話 誰も使わない新しい仕組み で出会ったしくみ。

USE 3工場長は、情シスから人を取ったつもりはなかった

情シスの島のホワイトボードの右端には、工場が止まったときの連絡先が書いてあります。いちばん上は、ずっと名人の名前でした。

名人あての直接の連絡は3月31日で終える、と決めた日。マーカーを取ったのは、名人自身でした。自分の名前を消し、その下に、中継サーバーの2人目になった中途のメンバーの名前を書く。少し考えてから、ボードの右下の隅に、小さく自分の名前を書き直しました。横に「相談先(4月から工場 設備)」。

キャップを閉めるまでに、いつもより少し時間がかかりました。

次の週、第二工場へ行きました。工場長に、なぜ名人を希望したのかを聞くためです。人事の紙には、理由までは書いてありませんでした。

話は、新しいラインの横で聞きました。ラインの終わりで、出たばかりのラベルが段ボールに貼られていきます。ラインの脇の小さなホワイトボードには、6月からの止まった回数が正の字で書いてありました。欄は3つ。「設備」「システム」「不明」。いちばん正の字が多いのは、「不明」の欄でした。

「6月から、このラインが止まるたびに、機械屋は『システムのほうだ』と言い、情シスは『機械のほうだ』と言う。どっちの持ち場か決まるまでに、半日かかった日もある。両方が分かる人が、こっちの側に一人ほしかった」

少し間をおいて、工場長は付け足しました。「情シスから取ったつもりは、ないんだが」

帰りの電車で、窓口ができてからの工場の記録を絞り込んでみると、半分近くに名人の名前が出てきました。「名人さんに聞いたら」「前に名人さんが」。情シスと工場の付き合いだと思っていたものの半分は、工場と名人の付き合いでした。名人が工場へ移れば、その半分は名人と一緒に向こうの席へ行く。

変更の日を工場長と一緒に決め、ラインを止めないという目標も分け合うようになって、1年目から情シスと工場の付き合いは少しずつ深くなってきました。それでも、止まった瞬間にまず確かめるのは、原因が自分の持ち場かどうかでした。持ち場の境目に立っていたのは、名人という一人の人だけだったのです。

4月からも、境目に立つ人は同じです。変わるのは、立つ場所が情シスの側から工場の側へ移ること。それなら、工場と名人の付き合いを、工場と情シスの付き合いに組み替えればいい。新しいリーダーは、工場長にひとつ提案しました。月に一度30分、工場長と、設備部門の名人と、情シスで話す。物差しは、ラインが止まった時間。原因がどちらの持ち場でも、同じ1本の数字として一緒に数える。

工場長は黙って、手帳の4月のページを開きました。

使ってみる情シスが付き合っている相手を、関係の深さで分ける

ITIL 5は、サービスの関係を深さで3つに分けます。基本的=取引が中心で、リスクはそれぞれが持つ。協調的=共通の目標に向けて連携するが、リスクと報酬はほぼ別々。協働的=情報を常に開き、リスクと報酬を分かち合う。

関係は、深ければよいわけではない。マウスを買う相手と、目標もリスクも分かち合う必要はない。深くする相手を選び、そこに時間を使う。

使ってみて分かったこと

名人の異動は、情シスの席から見れば、一人減る話でした。工場の席から見れば、ラインとシステムのあいだに橋が一本かかる話になる。関係の深さを相手ごとに選び直すと、名人の新しい席は、情シスがいちばん頼りにできる相手の席になりました。

ITIL›バリュー・システム›管理プラクティス›ITIL 4:一般管理›関係管理
No.10関係管理Relationship management

目的:組織と関係者のつながりを、戦略と戦術のレベルで築き、育てる

名人の異動を、工場とのあいだの橋に変える

組織と人材organizations and people
  • 工場との関係の窓口:新しいリーダー(ビジネス関係マネージャーの役)
  • 工場の設備部門:4月から名人。ラインの側の相談相手
  • 第二工場の工場長:月に一度、30分の相手
情報と技術information and technology
  • 関係者の一覧(相手の優先順位・期待・関係の深さ)
  • 月に一度の対話の記録(窓口の記録と並べて残す)
  • ラインが止まった時間(設備と情シスの共通の物差し)
パートナーとサプライヤーpartners and suppliers
  • ラインの機械のメーカー:設備部門を通して、止まったときの切り分けに加わる
バリューストリームとプロセスvalue streams and processes
  1. 相手を一覧にする
  2. 期待と不満を聞く
  3. 関係の深さを選ぶ
  4. 共通の物差しを置く
  5. 定期に話す
使えている目印
  • 工場からの相談が、ラインを変える前の段階で届く
  • 止まった原因が設備か情シスかを決める前に、一緒に調べ始めている
図4 関係管理の解剖図。目的のまわりに、ITILが各プラクティスの手引きで使う4つの側面を置き、この会社の具体を書き込んだ。

1年目では 第5話 緑の報告書、赤い顔 で出会ったしくみ。

RELIEF名人の形の穴は、埋めずに組み替えた

しくみを置く

4月から、窓際の名人の席は空きます。それでも3体の子は、少しだけ顔を上げました。顔を上げさせたのは、名人の代わりの誰かではありません。人と役割と関係の組み替えです。

新しいリーダーのうしろのはつみみ

怖がっていたこと自分の席を通らないところで、席の中身が動いていくこと

No.10|ITIL 4の分類:一般管理
関係管理
Relationship management
目的
組織と関係者のつながりを、戦略と戦術のレベルで築き、育てる
この話では
名人の異動を、工場とのあいだに橋がかかる話として見直した。工場長と、設備部門の名人と、月に一度話す場を置いた
ほっとしたのは
工場長との月に一度の30分。次に工場が人や仕組みを動かすときは、決まる前に話が届く
インフラ担当(名人)のうしろのぽつん

怖がっていたこと呼ばれなくなった席に、自分の居場所が残らないこと

No.7|ITIL 4の分類:一般管理
組織変更の管理
Organizational change management
目的
変化の「人の側面」を扱い、組織の変更を円滑に成功させ、効果を長続きさせる
この話では
伝える順番を、失うものの大きい順に組み直した。本人、チーム、工場。名人あての直接の連絡は3月31日で終える
ほっとしたのは
異動で何を失い、何を得るかを、最初に聞かれたのが自分だったこと。工場の側に、新しい役目が待っていること
中途で入ったメンバーのうしろのくうらん

怖がっていたこと書いていないところで事故が起き、誰かが責められること

No.14|ITIL 4の分類:一般管理
要員およびタレント管理
Workforce and talent management
目的
事業目標を支えるために、適切なスキルと知識を持つ人を、適切な役割に置く
この話では
名人の穴を、業務ごとの20行に分けた。名人だけが回せる3つに2人目を置き、2月の訓練で確かめる
顔を上げたのは
空いているところが、表の上で見えるようになったこと。2人目の名前と、確かめる日が入ったこと

中途のメンバーのうしろの子は、まだ半分しか顔を上げていません。表に書いた「2月の訓練」で2人目が一人で止めて戻せるかどうかは、その日が来るまで分からないからです。

番号と分類はITIL 4の並べ方です。ITIL 5の試験で押さえるのは「プラクティス=資源のまとまり」と2つのグループまで。

せきのこ ── 席のうしろの、小さな子たち

NOTE申し送りノート 12月の余白

白いままだった12月のページに、ようやく字が入りました。前のリーダーの字の横に、新しいリーダーの字で。

申し送りノート 12月の余白 ・人が抜けた穴は、その人の形をしていない。業務の形をしている。20の業務のうち、名人だけが回せるのは3つ。(要員およびタレント管理)
・2人目を育てた仕事は、評価に入れる。入れないと、教えるほど自分の席が消える気がする。
・異動は、失うものの大きい順に伝える。本人、チーム、工場。人事の発表を待つと、順番は噂が決める。(組織変更の管理)
・「何も変わりません」は、言わない。変わるものを先に言う。
・名人は消えない。工場の側の席に座り直す。(関係管理)
・関係は、深ければよいわけではない。深くする相手を選ぶ。
・確かめるのは、2月の停電の訓練。

CHECK確かめる

Q1. 名人が抜ける穴を「名人の仕事」として書き出すのをやめ、情シスがいま回している20の業務に、7人がいま付けられる◎と○を書き込むところから始めた。夏の育休のあいだに付いた◎も、そのまま数に入れる。従うべき原則のうち、いちばん近いものはどれか。

  1. A現状からはじめる start where you are
  2. B最適化し、自動化する optimize and automate
  3. C価値に着目する focus on value
  4. D全体的に考えて取り組む think and work holistically
答えを開く

A。作り直す前に今あるものを評価し、使えるものは使う原則です。名人をもう一人育てる計画は、すでに付いていた◎を見ないまま、ゼロから組み直そうとしていました。「何も変えない」という意味ではないので、残った3行には2人目を置いています。

Q2. 1年目から、情シスと第二工場は変更の日を一緒に決め、ラインを止めないという目標も分け合ってきた。それでも、止まった瞬間にまず確かめるのは、原因が自分の持ち場かどうかだった。ITIL 5のサービス関係の3つのタイプでいえば、この時点の関係はどれか。

  1. A基本的 basic
  2. B協調的 cooperative
  3. C協働的 collaborative
  4. Dサービスレベル合意 service level agreement
答えを開く

B。共通の目標に向けて努力は連携しているものの、止まったときのリスクはまだそれぞれが持っています。情報を常に開き、リスクと報酬を分かち合う協働的な関係は、4月からの設備部門との月に一度の30分で目指すもの。浅い順に、基本的→協調的→協働的です。Dは関係のタイプではなく、必要なサービスと期待するサービスレベルを文書で取り決めたものです。