包装機は、もう床の上にある。「止めるな」とだけ言う工場長と、全部を審議にかけたい中途のメンバー。
来月の店頭に並ぶ品の、初出荷まで3週間。
工場長の返事は、ひとことだけでした。
6月のはじめ、第二工場の包装棟の床に、黄色いテープで大きな四角が描かれました。ここに新しいラインが入る。四角の中では、ビニールをかぶったままの包装機が1台、まだ斜めを向いている。来月から、新しい取引先の惣菜売り場に並ぶ冷凍ハンバーグを、ここで包みます。
包装機は、重さとロット番号をラベルのシステムに送り、出荷ラベルを1枚ずつ刷らせます。取引先は新しい形のバーコードを求めていて、それを刷るには、ラベルのシステムの版を上げなければならない。初出荷の日は、営業本部と取引先のあいだで、とうに決まっていました。6月の最終週。
工場の会議室で工場長と向き合ったのは、4月に情シスのリーダーの席を継いだ、元ヘルプデスク担当です。隣には、同じ4月に大手のSIerから移ってきた、中途のメンバーが座っている。そのかばんには、付箋だらけの分厚いITILの本が、いつも入っています。
机には、変更カードが12枚。どれも、新しいラインのために情シスがする作業で、中途のメンバーが前の週に、1つ残らずカードに起こしてきたものです。
「本来は、全部CABを通すべきです」と、中途のメンバーは言いました。変更を審議する会議を毎週開き、工場長、情シス課長、ベンダー、設備メーカーで、1枚ずつ確かめる。1回2時間、初出荷までに3回。
工場長は、カードをめくりもせずに言いました。
「止めるな」
手順を省け、という意味に受け取ったのでしょう。中途のメンバーはかばんから本を出し、付箋の貼ってあるページを開きかける。はじめは、新しいリーダーもそう聞きました。立ち上げの3週間、工場長とライン長が毎週2時間抜ければ、ラインのほうが止まる。会議を減らせ、ということだろう、と。
ところが工場長は、12枚の中から1枚だけを抜き出して、指先で叩きました。ラベルのシステムの版を上げる、というカードです。
「で、これは、戻すのに何分かかる」
誰も答えられませんでした。
会議室を出ると、工場長は2人を出荷場へ連れていきました。トラックの着く口の手前に、ラベルを貼り終えた箱がトラックを待つあいだだけ置かれる、白い線で囲った床がある。工場長はその線の手前で立ち止まり、壁の温度計を顎で指しました。
「ここは、冷凍庫じゃない」
それ以上は、何も言いませんでした。
去年の6月、この工場の出荷場で、ラベルが2時間出なかった日がありました。精算サーバーの設定を1か所変えたら、同じサーバーに載っていたラベルの印刷が、締めの日の混雑で途中から切られた。品温の上がった冷凍の唐揚げは、基準を超えた分だけ捨てるしかなかった。工場長があの日に受け取ったのは、止まったという結果と捨てる箱の数だけで、誰が何を変えたのかを聞きに行くと、答えは個人チャットの中にありました。
工場長の「止めるな」には、2つの意味が重なっていました。立ち上げを会議で止めるな。そして、去年のように出荷を止めるな。重いのは2つ目のほうです。工場長が嫌っているのは、手続きそのものより、戻り道の書いていない変更でした。
「全部通すべき」のほうにも、筋の通った理由があります。手順が厚ければ、何かが起きても誰かひとりが責められずに済むはずで、前の職場ではその逆を見てきたらしい。
2人とも、去年の6月のような日を二度と起こしたくない。守りたいものは同じで、守り方が正反対だったから、間に座った新しいリーダーは、どちらの言葉にもすぐにはうなずけないまま、12枚をいったん持ち帰ることにしました。
正反対に聞こえる2つの言葉と、作る側の席、出す側の席。4つの席のうしろをめくると、子はそれぞれ別のものを怖がっています。
子は人ではなく、席につく。言葉がきつくなるのは、うしろの子が何かを怖がっているとき。6体の紹介は地図に
「止めるな」
怖いのは自分の知らないところで決まった変更で、ラインがまた止まること。捨てる箱を数える役目だけが、自分に回ってくること
「検証用の環境で、動作確認済みです」
怖いのは何をもって合格と言えばいいのか決まらないまま、本番の日が来ること
「本来は、全部CABを通すべきです」
怖いのは確かめないまま本番に入った変更で事故が起き、あとで誰かひとりが責められること
「初出荷の日だけは、ずらせません」
怖いのはいちばん動かせない日に、まだそろっていない新しいものが入ってくること
せきのこ ── 席のうしろの、小さな子たち
情シスの島に戻った新しいリーダーは、12枚を机に並べ直してから、前のリーダーが残した引き継ぎ資料を開きました。管理プラクティスの章に、去年の12月の書き込みがある。「3分の作業には、3分の手続き」。
その一行のきっかけを作ったのは、ほかでもない自分でした。権限ひとつ付けるのに2日かかった週に、裏紙へ流れを書き出して、前のリーダーの席まで持っていった。仕事の性質で手続きの重さを変えると決まったのは、そのあとのことです。
理屈は分かっている。けれど、目の前の12枚のどれが「3分の作業」なのかは、資料のどこにも書いていません。
そこへ、工場長から個人の携帯に電話が入りました。「プリンターだけでも、今日つないでくれないか。試し刷りを始めたい」。電話に伸びた手は誰より早かったのに、口から出たのは、去年覚えた言葉でした。
「決まりなので、窓口を通してください」
電話を切ってから、しばらく画面を見ていました。言ったことは正しい。でも、窓口を通せば今日つながるのかと聞き返されていたら、12枚が全部同じ重さで並んでいるいまは、答えられなかったはずです。
相談すると、中途のメンバーは本の付箋のページを開いて見せてくれました。「標準変更にするなら、手順を作るときに一度は評価と許可が要ります。そこを飛ばしたら、ただの抜け道です」
それは正しい。そう思いながら手元の一覧を確かめると、去年の冬に作った標準変更の一覧には、機械を工場のネットワークにつなぐ手順も、ラベルのプリンターを足す手順も、評価と許可を済ませた形で載っていました。足りないのは、残りのカードを何で分けるか、でした。
2人で決めた問いは2つです。手順は、もう決まっているか。止まったときに止まるのは新しいラインの中だけか、それとも今動いている5本のラインまで響くか。隣の席から、一緒に置いてみてください。
縦は、手順がもう決まっているか。横は、止まったときに響く範囲。置いたマスで、誰が許可するかが決まります。
項目を1つ選んでから、マスを押してください。
左上は、事前に許可した手順でその日に動かす標準変更。左下は情シス課長が許可し、右の列には工場長も許可者に入る。集まって決めるのは、右下の1枚だけでした。
12枚のうち8枚は、事前に許可した手順でその日に動かせる標準変更でした。2枚は情シス課長が許可し、ネットワークの機器を入れ替える1枚は、工場長も許可者に入る。集まって決めるのは、版を上げる1枚だけです。
並べ終えると、中途のメンバーは赤いペンを取り、11枚のカードから「審議」の印を1つずつ消していきました。消し終えるまで、何も言わなかった。右下の1枚にだけ、印が残りました。
工場長には、こちらから電話をかけ直しました。「プリンターは標準変更です。窓口に出してもらえれば、今日つなげます」。その日のうちに、新しいラインのプリンターから、試し刷りのラベルが1枚出てきました。
それまで、工場長の頼みごとは個人の携帯にかかってくるものでした。それが窓口に番号つきで届き、その日のうちに片付いたので、窓口から来た返事の画面を、工場長はしばらく眺めていたそうです。
版を上げる1枚の会議は、テストの結果と、戻すのにかかる時間がそろってから開く。2人で、そう決めました。何を確かめれば許可してよいのかが、まだ1つも書いていなかったからです。
許可する人は、変更の種類と、止まるものの大きさで決めればよかった。重い会議は、なくしていません。重い1枚に集めただけです。「全部通す」という中途のメンバーの言い分は、その1枚については正しかった。
目的:リスクを評価し、変更を許可し、予定を管理して、成功する変更の数を最大にする
重さは、止まるものの大きさで決める
1年目では 第3話 で出会ったしくみ。
版を上げる準備は、ベンダーのSEが検証用の環境で進めました。去年の6月のあと、ラベルのシステムの契約に足された、本番と同じ版、同じ設定で試せる場所です。
1週間ほどして、SEから窓口に報告が届きました。
「検証用の環境で、動作確認済みです」
何を確かめたのかを聞くと、返事は短いものでした。新しい様式のラベルが、1枚、正しく刷れた。
SEはうそをついていない。版は動いています。ただ、去年の6月に出荷場で起きたのは、刷れないことではなく、ふだんは刷れているラベルが、締めの日の混雑で途中から切られたことでした。1枚刷れたことは、あの日が来ない証拠になりません。
出荷場にも聞きに行きました。壁には、取引先ごとのラベルの見本がクリップで留めてある。そのうちの1枚を外して、出荷担当が言いました。「刷れても、向こうの物流センターで読めなかったら、箱は全部うちに返ってきます」
確かめることは、少なくとも3つありました。取引先の読み取り機で新しいラベルが読めるか、版を上げても今の5本のラインのラベルが前と同じに刷れるか、そして、出荷のいちばん多い日と同じ量を流しても途中で切られないか。新しいリーダーは、それを「合格の条件」として、テストの前にカードへ書くことにしました。
下書きを見せると、中途のメンバーは「受け入れ基準ですね」と言って、1行を足しました。テストの結果を誰が見て合否をつけるのか、そこが空いていると、作った人が自分で合格を出すことになる、と。
テストの前に、何ができたら本番に移してよいかを決めます。決めるときは、使う側と一緒に。
1枚刷れたのは「動いた」の証拠。使う側にとっての合格は、物流センターで読めること。そもそも求められているものかを確かめるのが、妥当性確認です。
版を上げれば、今のラインも新しい版で刷る。変更で、今まで動いていたものが壊れていないかを確かめるテストを、回帰テストと呼びます。
去年の6月は、締めの日の混雑で印刷が切られた。性能を見るテストは、いちばん混む日の量で行う。本番で増やしながら見るのは、確かめたことになりません。
合否は、条件を求めた側が結果を見て決め、変更を許可する課長と工場長に渡す。作った人が自分で合格を出すと、去年と同じ「対応しました」に戻ります。
SEは、この1枚を受け取って言いました。「何を確かめればいいかが先にあると、こっちも助かります」
結果は、合格が2つ、不合格が1つ。5本のラインのラベルは前と同じに刷れ、月末と同じ量を流しても1枚も切れなかった。不合格は物流センターです。見本のラベルを30枚送ったところ、新しいバーコードの読み取りに10枚失敗した、と返事が来ました。
返事を受け取った出荷担当は、壁の見本の横に、不合格の知らせを1枚クリップで留めました。直ったら外す、と言って。原因は、刷る濃さの設定でした。SEが直して送り直すと、30枚すべてが読めた。その日のうちに、壁の紙は外されました。
本番の前の不合格は、事故にならない。去年の不具合は、本番で見つかったから、2時間の停止になりました。
仕様どおり動くかを確かめるのがテストで、そもそも求められているものかを確かめるのが妥当性確認。物流センターで読めるかどうかは仕様書のどこにも書いていなくて、使う人に聞きに行って、はじめて合格の条件に入りました。
目的:新しい、または変更された製品とサービスが、決められた要件を満たすようにする
「動いた」と「使える」を、先に書き分ける
1年目では 第3話 で出会ったしくみ。
移す日を決める前に、新しいリーダーはSEに1つ頼みました。検証用の環境で、版を上げる手順と、元へ戻す手順を、通しで1回ずつやってみてほしい。時間を測りながら。
上げるのに50分。戻すのに35分。
この2つの数字で、移す日の条件が決まります。第二工場は出荷のない日にラインを止めて掃除と点検をするので、そのあいだに版を上げ、試しのラベルを刷り、だめなら戻して、もう一度刷る。2時間半あれば収まります。
日を相談すると、出荷担当から最初に返ってきたのは、この一言でした。
「初出荷の日だけは、ずらせません」
そこで移す日は、初出荷の2週間前の、出荷の山を外した日にしました。窓口の共有カレンダーにある変更スケジュールに載せると、工場長は自分でカレンダーを開き、その日の出荷予定と見比べていたそうです。
ここで、版を上げる1枚の会議を開き、仕切りは中途のメンバーに任せました。工場長、情シス課長、ベンダーのSEがそろい、読むのは1枚だけ。付箋のページを開いたまま本を机に置き、影響先、合格の条件とその結果、戻し方、実施する日と、欄を順に確かめていく。SEが答えに詰まった欄は空けたまま次へ進み、最後にもう一度戻ってきました。
工場長が口を開いたのは、一度だけです。戻し方の欄の「35分」を指でなぞって、「これは、試した数字か」。SEが、検証用の環境で測った数字だと答えると、工場長はうなずき、許可の欄に名前を書きました。会議は40分で終わりました。
版を上げる日のまわりの段取りです。工場長の「戻すのに何分」に答えられる順に、並べてください。
先にやるものから順に押してください。
戻す手順は、移す手順と同じ重さで用意する。止まると痛い現場ほど、移す前の準備が長くなります。
1回目の置く日。ラインの止まった包装棟で、SEは手順書どおりに版を上げました。50分。それから、5本のラインで試しのラベルを1枚ずつ刷っていく。1号ライン。2号ライン。どちらも、前と同じ顔のラベルが出た。
3号ラインのプリンターだけが、何も吐き出しませんでした。紙を送る音もしない。
SEがプリンターの小さな画面をのぞきこみ、「10分ください、ドライバーの相性だと思います」と言いかけたとき、新しいリーダーの携帯が鳴りました。誰より早く手が伸びる。出荷担当からでした。「3号の品は、次の出荷のいちばん最初の便に載るんです」
手順書の最後の行には、前もって決めた条件が書いてありました。試しのラベルが1本のラインでも刷れなければ、原因は探さずに、元の版へ戻す。
「戻します」。電話の向こうに言ったのは、それだけでした。SEは手を止め、戻す手順に移った。35分後、3号ラインのプリンターは、元の版で試しのラベルを吐き出しました。
片付けながら、中途のメンバーがぽつりと言いました。「前の職場では、戻した人が始末書を書いていました」
審議を通さずに入れた小さな変更が、客先のシステムを半日止めた。作業をした若手が、ひとりで責められた。手順を全部厚くしたかったのは、あの若手のような人を二度と出したくなかったからでした。この日、戻したことを責める人がひとりもいなかったのは、戻すことが、最初から手順書の1行として書いてあったからです。
変更カードの結果の欄には、中途のメンバーが自分で書き込みました。「手順書の条件どおり、元の版へ戻した。出荷への影響なし。2回目は1週間後」。誰の名前も出てこない、3行だけの記録でした。
次の出荷が何事もなく出ていったあと、窓口の記録を読んだ工場長は、カードの余白に一行だけ書き足しました。「戻せたなら、それでいい」
原因は、3号ラインのプリンターだけが古い型だったことでした。検証用の環境には、その型がなかった。SEは、工場の倉庫にあった同じ型の予備機を借りて検証用の環境につなぎ、新しいドライバーで刷れることを確かめました。1週間後の2回目の置く日、6本のラインはすべて、新しい版で試しのラベルを刷りました。
その日、包装棟に顔を出していた工場長は、3号ラインのプリンターから試しのラベルが出てくるのを見届けると、何も言わずに出荷場のほうへ戻っていきました。
戻す手順は、書いただけでは道具になりません。一度試して時間を測ったから、移す日を選べたし、戻すと決めるのに迷わなかった。戻したことは、失敗の記録にならずに、手順どおりの1行として残りました。
目的:新しい、または変更されたものを、本番やテストの環境へ移す
戻す時間を測ってから、移す日を決める
1年目では 第3話 で出会ったしくみ。
1回目に戻しても、初出荷の日はずれなかった。日付の置き方のおかげです。
↓ ここまでが「置く」。ここからが「使えるようにする」
新しい版をラベルのシステムに置く日と、新しい品番のラベルを使い始める日を、最初から分けていました。版を置いても新しい品番は画面で選べないようにしておき、選べるようにするのは、初出荷の前日の試し生産から。置く日を2週間前にしたのは、一度戻してもやり直せる余白を残すためでした。
使い始める日までにそろえておくものを考えたとき、最初に思い出したのは、この3月の大雪の日でした。停電で出荷ラベルを手書きに切り替えたとき、予備の様式には、取引先の新しい品番を書く欄がなかった。手書きの予備様式にも、今度の品番の欄が要ります。
ほかにも、出荷場とライン長への説明、物流センターへの知らせ、窓口にある「ラベルが出ないとき」のカードの書き足しがある。どれも、システムに何かを置く作業とは違い、使う人が使えるようになるための作業です。
窓口のカードは、ヘルプデスクにいたころにいちばん多く書いてきた種類のカードなので、新しいリーダーが自分で書き足しました。足したのは、新しいラインのプリンターの置き場所、止まったときに手書きへ切り替える手順、予備の様式のしまってある棚。書きながら、3月の大雪の日に工場からかかってきた電話を思い出していました。受話器の向こうで、短い警報音が鳴り続けていたことも。
「包装機が届いた日から、最初のトラックが出るまでを、1本の流れで並べさせてください」と、新しいリーダーは出荷担当に頼みました。「注文アプリを出したときに覚えた、バリューストリームの描き方です」
やることを出荷担当と一緒に並べてみると、3つの種類が混ざっていました。確かめる仕事、置く仕事、使えるようにする仕事。分けてみます。
出荷担当と並べた6つの仕事です。確かめる仕事か、置く仕事か、使えるようにする仕事か。
置くのは展開、使えるようにするのはリリース、確かめるのは妥当性確認とテスト。同じ「本番に入れる」の中に、3つの仕事が混ざっていました。分けておくと、それぞれの日付を別々に決められます。
初出荷の前日、試し生産の1箱目に、新しいバーコードのラベルが貼られました。スキャナーを当てたのは出荷担当です。短い音が、1回だけ鳴った。
当日のトラックは、予定どおりに出ていきました。窓口には、新しいラインについての連絡が1件も来なかった。
何日かして、工場長から窓口に依頼が1件届きました。来月、検査の機械を1台入れ替えたい。依頼の最後には、こう書き添えてありました。「戻すのに何分かかるか、先に教えてくれ」
依頼に番号を付けて、新しいリーダーは変更カードの下書きを開きました。いちばん先に埋めたのは、戻し方の欄です。
リリースは、システムの中では終わりません。手書きの予備様式も、窓口のカードも、出荷場への説明も、使い始める日にそろって、はじめて「使える」になる。置く日を前にずらしておくと、そろえる時間と、戻す余白が、一緒に手に入りました。
目的:新しい、または変更されたサービスや機能を、使える状態にする
置く日と、使い始める日は別の日
1年目では 第10話 で出会ったしくみ。
1回目の置く日に、ラベルのシステムは元の版へ戻りました。それでも初出荷の日は動かず、戻したことを責める人もいませんでした。4つの席に置いたしくみは、どれも、新しいものが本番に入るまでの道の上にあります。
怖がっていたこと自分の知らないところで決まった変更で、ラインがまた止まること。捨てる箱を数える役目だけが、自分に回ってくること
怖がっていたこと何をもって合格と言えばいいのか決まらないまま、本番の日が来ること
怖がっていたこと確かめないまま本番に入った変更で事故が起き、あとで誰かひとりが責められること
怖がっていたこといちばん動かせない日に、まだそろっていない新しいものが入ってくること
やってよいかを決める、確かめる、置く、使えるようにする。去年は1本の道として並べたものを、今年は4つの持ち場に分け、それぞれに持ち主を置きました。工場長の名前は、そのうちの1つの、許可の欄にあります。
番号と分類はITIL 4の並べ方です。ITIL 5の試験で押さえるのは「プラクティス=資源のまとまり」と2つのグループまで。
せきのこ ── 席のうしろの、小さな子たち
前のリーダーの引き継ぎ資料は、5つの章でできています。従うべき原則、ガバナンス、バリューチェーン、管理プラクティス、継続的改善。そのうち管理プラクティスの章の、変更カードのページの余白に、新しいリーダーはこう書き足しました。
Q1. 検証用の環境で、版を上げる手順と戻す手順を通しで試した。そのうえで、ラインが止まっているあいだに新しい版を本番へ移し、全部のラインで試しのラベルを刷って、使える状態かを確かめた。ITILの8つのライフサイクル活動のどれにあたるか。
B。新しく作ったものや変えたものを安全に本番へ移し、使える状態かを確かめるのが移行です。成功は、本番に持ち込んだエラーの数と、事業への影響で測ります。部品を作って仕様どおりかを試すのが構築、本番を合意した水準で動かし続けるのが運用、止まったものを通常に戻すのがサポートです。
Q2. 3分で済む作業は事前に許可した手順で通し、ラインに響く変更だけを集まって決めることにした。手続きの重さを、止まるものの大きさに合わせるという判断の拠り所は、ITILバリュー・システムのどの部品か。
A。「シンプルにし、実践的にする」のような、迷ったときの判断の拠り所は従うべき原則です。ガバナンスは方向を決めて確かめる仕組み、バリューチェーンは価値を生む活動の並び、継続的改善は今のやり方を測って良くし続ける働きです。