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情シスのための ITIL 4 入門|Foundation の範囲をやさしい言葉で

ITIL 4 を、やさしい言葉で全体から学ぶ

ITIL 4 は、ITサービスを安定して届けるための「良いやり方の型」を集めたものです。このページでは、入門資格(ITIL 4 Foundation)で扱う内容を、教科書の訳語に頼らずに、全体の地図から順にたどります。

全体の地図から読む下の図の部品を押すと、その章に飛べます。
どの章も同じ型ひとことで、図、説明、例、確認問題の順です。
教科書の言葉は後回し英語の原語と訳語は、各章の折りたたみにあります。
目次をひらく
    すべてを4つの側面から考える(4章):組織と人材/情報と技術/パートナーとサプライヤ/バリューストリームとプロセス

    図 ITIL 4 の全体像。「こうしたい」という機会や需要を受け取り、組織全体の仕組みで価値に変える。1章はITILそのもの、12章は全体のつなぎ方を扱う。

    1章 約5分

    ITILは、ITサービスを運営する「良いやり方の型」を集めたもの

    ITILは、世界中の組織がITサービスの運営で積み上げてきたやり方を、型としてまとめた枠組みです。

    ITILは、法律や規格のように守らなければ罰がある決まりではありません。自分の組織に合わせて、使える部分を取り入れるものです。

    始まりは1980年代後半、イギリス政府の取り組みでした。その後に版を重ね、2019年にITIL 4が出ました。2026年にはVersion 5も出ていますが、骨格はITIL 4を引き継いでいます。

    1980年代後半イギリス政府の取り組みとして誕生
    2007年 v3サービスのライフサイクルとプロセスで説明
    2019年 ITIL 4価値を生む仕組み全体で説明
    2026年 Version 5ITIL 4を土台に、AIや体験を重視

    v3までは、サービスの一生を段階に分け、段階ごとのプロセスで説明していました。ITIL 4は、価値を生み出す仕組み全体で説明します。AgileやDevOpsなど、新しい働き方と一緒に使えるように組み替えられています。

    「パスワードを忘れた」「PCが遅い」「新しいツールを使いたい」。情シスに毎日届くこうした依頼を、どう受けて、どう処理し、どう良くしていくか。その型がITILにまとまっています。

    教科書ではこう書かれている言葉
    原語平易に訳語の例
    IT service management(ITSM)ITサービスを運営し、管理することITサービスマネジメント
    Best practice多くの組織で効果が確かめられたやり方ベストプラクティス
    Framework考え方と型をまとめた枠組みフレームワーク

    2章 約8分

    価値は、提供する側と使う側が一緒に作る

    サービスの価値は、提供する側が一方的に渡すものではありません。使う側と協力して、はじめて生まれます。

    サービスに関わる立場

    サービスには、提供する側(サービス提供者)と、使う側(サービス消費者)がいます。社内なら、情シスが提供者で、営業部などが消費者です。消費者の中には、さらに3つの役割があります。

    顧客何がほしいかを決め、得られる成果に責任を持つ人。例:営業部長
    利用者実際にサービスを使う人。例:営業部の社員
    スポンサーお金を出すことを認める人。例:担当の役員

    1人が複数の役割を兼ねることもあります。3つの役割は、求めるものが違います。利用者は使いやすさを、スポンサーは費用に見合うかを気にします。

    価値の共創

    情シスがツールを入れても、使う側が使い方を合わせなければ、価値は生まれません。ITIL 4はこれを価値の共創と呼び、価値は両者の協力で生まれると考えます。

    アウトプットと成果は違う

    Outputアウトプット活動の結果できたもの。例:新入社員のアカウントを発行した
    Outcome成果それによって相手が得られること。例:新入社員が初日から顧客情報を見られる

    ITILが重視するのは成果です。アカウントを発行しても、権限が足りず仕事ができなければ、成果は出ていません。

    コストとリスクは、減らすものと負わせるものがある

    サービスは、相手のコストやリスクを減らします。例えば、自分でサーバを持たなくてよくなります。一方で、新しく負わせるものもあります。利用料や、ルールを守る手間です。価値は、得られる成果と、この差し引きで決まります。

    新しいSaaSの説明で「こんな機能があります」とアウトプットだけを並べても、相手には響きません。「月末の集計が半日早く終わる」のように、相手の成果で話すと伝わります。

    教科書ではこう書かれている言葉
    原語平易に訳語の例
    Value何かが役に立つ、大事だと感じられること価値
    Value co-creation提供者と消費者が協力して価値を作ること価値の共創
    Service provider / consumer提供する側/使う側サービス・プロバイダ/サービス消費者
    Customer / User / Sponsor決める人/使う人/お金を認める人顧客/ユーザー/スポンサー
    Output / Outcomeできたもの/得られることアウトプット/成果

    3章 約7分

    サービスの良さは「役に立つか」と「安心して使えるか」の2つで決まる

    何ができるか(有用性)と、約束どおり使えるか(保証)。両方がそろって、はじめて価値になります。

    Utility(目的に合う)有用性そのサービスで何ができるか。例:ファイルを共有できる、検索できる
    Warranty(使える状態にある)保証約束どおりに使えるか。例:いつでもつながる、情報が漏れない、混んでも遅くならない

    どちらかが欠けると、価値は出ません。機能が豊富でも、月に何度も止まるサービスは使われなくなります。安定していても、必要な機能がなければ意味がありません。保証には、使える時間、処理の容量、セキュリティ、災害時も続けられるか、などが含まれます。

    サービス・オファリング:何を差し出すか

    提供者が消費者に示す「サービスの中身」を、サービス・オファリングと呼びます。中身は3種類の組み合わせです。

    種類中身例
    物形のあるもの。持ち主が移ることもある貸与するPC本体
    資源を使う権利持ち主は移らず、使えるようにするもの共有フォルダやSaaSを使う権利
    サービスの行為提供者が相手のために行うことヘルプデスクの対応、設定作業

    サービス関係:提供と利用を続ける関係

    提供者と消費者の関係は、1回の取引で終わりません。提供する、使う、関係を保つ、を繰り返しながら続いていきます。この続く関係全体を、サービス関係と呼びます。

    「Copilotを使いたい」という声に、ライセンスを渡すだけで終えると、有用性しか見ていません。社外秘の扱い(セキュリティ)や、問い合わせへの対応(サポート)まで決めて、はじめて保証がそろいます。

    教科書ではこう書かれている言葉
    原語平易に訳語の例
    Utility(fit for purpose)何ができるか。目的に合っているか有用性
    Warranty(fit for use)約束どおり使えるか保証
    Service offering提供者が示すサービスの中身サービス・オファリング
    Goods / Access to resources / Service actions物/資源を使う権利/サービスの行為商品/リソースへのアクセス/サービス・アクション
    Service relationship提供と利用が続く関係サービス関係

    4章 約7分

    どのサービスも、4つの側面から考えないとどこかで崩れる

    人、情報と技術、取引先、仕事の流れ。この4つを同時に考えると、抜けのないサービスになります。

    組織と人材誰が担い、どんな力量が要るか役割、スキル、チームの分担、文化。例:管理の担当者と代わりの人
    情報と技術どの情報を、どの道具で扱うかデータ、ツール、AI。例:台帳、問い合わせ管理の仕組み
    パートナーとサプライヤ外部の会社に何を任せるか事業者、保守会社、委託先。例:SaaS事業者との契約
    バリューストリームとプロセス仕事がどう流れて価値になるか手順と流れ。例:申請から使えるようになるまで

    外側から、政治・経済・社会・技術・法律・環境の変化(外部要因)が4つすべてに影響する

    よくある失敗は、新しいツール(情報と技術)だけを入れて、担当者も流れも決めないことです。1つの側面だけを整えても、残りの3つで止まります。

    外部要因は、頭文字を取ってPESTLEと呼ばれます。法律が変わればデータの扱いが変わり、景気が変われば予算が変わります。

    SaaSを導入したのに、誰が管理するか決めておらず、退職者のアカウントが残り続けた。これは「組織と人材」と「バリューストリームとプロセス」の抜けです。

    教科書ではこう書かれている言葉
    原語平易に訳語の例
    Four dimensions of service managementサービスを考える4つの観点サービスマネジメントの4つの側面
    Organizations and people人と組織組織と人材
    Information and technology情報と道具情報と技術
    Partners and suppliers外部の会社パートナーとサプライヤ
    Value streams and processes仕事の流れバリューストリームとプロセス
    PESTLE外部の6つの変化外部要因(PESTLE)

    5章 約6分

    組織全体を、価値を生む1つの仕組みとして見る

    「こうしたい」を受け取り、価値に変える組織全体の仕組みを、5つの部品で表したものがサービスバリュー・システム(SVS)です。

    入口は、機会と需要です。機会は「こうすれば良くなる」という可能性、需要は「これがほしい」という声です。出口は価値です。その間を、5つの部品が支えます。

    部品ひとことで章
    従うべき原則どんな場面でも判断の拠り所になる考え方6章
    ガバナンス組織の方向を決め、見守る仕組み7章
    サービスバリュー・チェーン価値を生む6つの活動8章
    プラクティス目的ごとの実践の型(34個)10・11章
    継続的改善すべての部品を良くし続けること9章

    SVSのねらいは、部署ごとに閉じた縦割り(サイロ)をなくすことです。情シス、総務、事業部がそれぞれ自分の手順だけを見ていると、依頼は部署の境目で止まります。SVSは、組織全体を1つの仕組みとして見るための地図です。

    アカウントの申請が、総務の入社手続きと情シスの発行作業の間で止まる。これは部署ごとの手順はあっても、組織全体の流れがない状態です。

    教科書ではこう書かれている言葉
    原語平易に訳語の例
    Service value system(SVS)価値を生む組織全体の仕組みサービスバリュー・システム
    Opportunity / Demand良くなる可能性/ほしいという声機会/需要
    Silo部署ごとに閉じた縦割りサイロ

    6章 約10分

    迷ったときは、7つの原則に立ち返る

    7つの原則は、どんな場面でも使える判断の拠り所です。状況に合わせて、いくつかを組み合わせて使います。

    原則1価値に着目するFocus on valueすべての活動を、誰のどんな価値になるかで判断する。例:手順を増やす前に、それで誰が助かるかを問う
    原則2現状からはじめるStart where you are一から作り直す前に、今あるものを観察し、使えるものは使う。例:新ツールを選ぶ前に、今のExcel台帳を見る
    原則3フィードバックをもとに反復して進化するProgress iteratively with feedback小さく分けて進め、結果を見て直す。例:全社展開の前に、1部署で試す
    原則4協働し、可視性を高めるCollaborate and promote visibility関係者を巻き込み、進み具合や判断を見えるようにする。例:案件を一覧にして、誰でも見られる場所に置く
    原則5包括的に考え、取り組むThink and work holistically部分だけを見ず、全体のつながりの中で考える。例:アカウントの発行だけでなく、削除までの流れを一緒に設計する
    原則6シンプルにし、実践的にするKeep it simple and practical価値を生まない手順は削る。例:誰も確認していない承認欄をなくす
    原則7最適化し、自動化するOptimize and automateまず無駄を除いて整え、それから自動化する。順番を逆にしない。例:手順を整理してから、マクロにする
    よくある誤解:原則7の「自動化」だけを急ぐと、無駄な手順まで機械が速く回すようになります。整える(最適化)が先、自動化は後です。
    教科書ではこう書かれている言葉

    原則は英語で Guiding principles、訳語の例は「従うべき原則」です。各原則の訳語は、上のカードに載せた形が研修教材などで使われています。教材によって、言い回しが少し異なることがあります。

    7章 約4分

    ガバナンスは、組織の方向を決め、見守る仕組み

    組織が正しい方向に進んでいるかを、上の立場から評価し、方向を示し、見守ります。

    評価する今の状態と、これからの必要を見極める
    方向を示す方針や戦略を決め、責任を割り当てる
    監視する方針どおりに進んでいるかを見守る

    ガバナンスを担うのは、経営層や取締役会などです。ガバナンスが方針を決め、現場の活動はその方針に沿って行います。現場が判断に迷ったとき、根拠にできるのは、この方針という「決めごと」です。

    「個人情報を扱うSaaSは、導入前に審査を通す」という方針は、ガバナンスの領域です。審査をどんな手順で行うかは、現場のプラクティスの領域です。

    教科書ではこう書かれている言葉
    原語平易に訳語の例
    Governance方向を決めて見守る仕組みガバナンス
    Evaluate / Direct / Monitor評価する/方向を示す/監視する評価/指示/モニタリング

    8章 約10分

    価値を生む活動は6つ。依頼ごとに組み合わせ方が変わる

    価値を生む活動は6つです。依頼の種類ごとに、6つをどの順で通るかを決めたものを「バリューストリーム」と呼びます。

    活動ひとことで
    計画Plan方向や方針を、組織全体でそろえる
    改善Improveすべての活動を良くし続ける
    エンゲージEngage関係者の要望を理解し、関係を保つ。窓口の活動
    設計および移行Design and transition期待される品質・費用・時期を満たすよう設計し、本番に移す
    取得/構築Obtain/build必要な部品(機器、ソフト、契約など)を用意する
    提供およびサポートDeliver and support合意した内容どおりに提供し、使う人を支える

    6つは、順番の決まった工程ではありません。依頼ごとに、必要な活動を必要な順で組み合わせます。下のボタンで、依頼の種類ごとの通り道を確かめてください。

      依頼の種類ごとに通り道を決めておくと、担当者が替わっても同じ流れで処理できます。依頼のたびにその場で考えずに、先に決めた流れに合わせて動けるということです。

      教科書ではこう書かれている言葉
      原語平易に訳語の例
      Service value chain価値を生む6つの活動サービスバリュー・チェーン
      Value stream依頼の種類ごとの、活動の通り道バリューストリーム

      9章 約6分

      大きな改革より、7つの問いで少しずつ良くする

      改善は、7つの問いを順に回して進めます。一度で終わらせず、小さく繰り返します。

      1. 目指す姿は何か何のために良くするのかを確かめる
      2. 今どこにいるか今の状態を測る
      3. どこを目指すか測れる目標を置く
      4. どうやってたどり着くか小さく分けた計画を立てる
      5. 行動する計画を実行する
      6. たどり着いたか測って確かめる
      7. 勢いをどう保つか成果を共有し、やり方を定着させる

      改善のアイデアは、1か所に集めて記録します。この記録を継続的改善登録簿と呼びます。集めたアイデアに優先度を付け、進み具合を管理します。

      改善は全員の仕事です。担当のチームを置いてもかまいませんが、任せきりにはしません。

      同じ問い合わせが毎月20件来ている。まず件数を測り(2)、半分にする目標を置き(3)、よくある質問のページを作る(4・5)。翌月の件数で確かめ(6)、ページの更新を誰がするか決めて定着させます(7)。

      教科書ではこう書かれている言葉
      原語平易に訳語の例
      Continual improvement model改善を進める7つの問い継続的改善モデル
      Continual improvement register(CIR)改善のアイデアを集めた記録継続的改善登録簿

      10章 約10分

      プラクティスは、目的ごとの実践の型。34個を3つに分けて覚える

      プラクティスは「ある目的を果たすための、人・情報・取引先・流れのひとまとまり」です。全部で34個あります。

      v3の「プロセス」は、主に手順を指していました。プラクティスはもっと広く、担当者や道具、取引先まで含めた1つの型です。4章の4つの側面を、すべて含んでいます。

      グループ数どこから来たか
      一般マネジメント14組織全体の経営や管理の仕事から取り入れたもの
      サービスマネジメント17ITサービス管理の中心になるもの
      技術マネジメント3技術の仕事から取り入れたもの

      入門資格で扱うのは、このうち15個です。7個は中身まで(11章)、8個は目的だけを押さえます。まずは15個から覚え、残りは必要になったときに引けば十分です。

      教科書ではこう書かれている言葉

      プラクティスは英語で Practice、管理の実践を指して Management practice とも呼ばれます。グループの原語は、General / Service / Technical management practices です。各プラクティスの訳語は、教材によって表記が異なることがあります。

      11章 約15分

      日々の依頼に直結する7つは、中身まで押さえる

      インシデント、問題、変更、サービス要求の4つは混同しやすい言葉です。まず違いを比べてから、7つを1つずつ見ます。

      インシデント問題サービス要求変更
      きっかけ予定外の停止や品質の低下インシデントの原因決まった種類の依頼何かを足す・直す・外す
      目的早く元に戻す起きにくく、影響を小さくする決まった手順で応えるリスクを抑えて成功させる
      例VPNにつながらない月曜の朝だけVPNが止まる原因アカウントを追加したいVPN装置を入れ替える
      インシデント
      きっかけ
      予定外の停止や品質の低下
      目的
      早く元に戻す
      例
      VPNにつながらない
      問題
      きっかけ
      インシデントの原因
      目的
      起きにくく、影響を小さくする
      例
      月曜の朝だけVPNが止まる原因
      サービス要求
      きっかけ
      決まった種類の依頼
      目的
      決まった手順で応える
      例
      アカウントを追加したい
      変更
      きっかけ
      何かを足す・直す・外す
      目的
      リスクを抑えて成功させる
      例
      VPN装置を入れ替える

      インシデント管理

      Incident management

      インシデントとは、サービスが予定外に止まる、または品質が下がること。

      • 目的は、できるだけ早く元に戻し、悪い影響を小さくすること。原因を突き止めるのは、次の問題管理の仕事です。
      • 優先度は「影響度(どれだけ多くの人や業務に響くか)」と「緊急度(どれだけ急ぐか)」で決めます。誰が言ってきたかでは決めません。
      • よくあるものは手順を用意し、難しいものは複数の担当者で一気に取り組みます。

      問題管理

      Problem management

      問題とは、1つ以上のインシデントの原因、または原因になりうるもの。

      • 3つの段階で進めます。問題を見つける、原因を分析して回避策を用意する、残った誤りを管理する、の3つです。
      • 原因は分かったが、まだ直していない問題を「既知のエラー」と呼びます。直すまでの間は「回避策」でしのぎます。
      • 恒久的に直す作業は、変更として変更実現に引き渡します。

      変更実現

      Change enablement(以前は Change control)

      変更とは、サービスに直接または間接に影響しうるものを、足す・直す・外すこと。

      • 目的は、リスクをきちんと見積もり、承認し、成功する変更を増やすことです。
      • 変更は3種類に分けます。標準の変更は低リスクで手順が決まっており、前もって承認済みです。通常の変更は、その都度承認を得ます。緊急の変更はできるだけ早く行いますが、承認と記録を省かず、速い手順で通します。
      • 変更の種類ごとに、誰が承認するか(変更の承認者)を決めておきます。

      サービス要求管理

      Service request management

      サービス要求とは、利用者などからの依頼のうち、サービスの通常の一部として前もって合意された行為を始めるもの。

      • アカウントの追加、PCの貸与、情報の問い合わせなどが当たります。障害とは別の、決まった種類の依頼です。
      • 前もって種類を決め、手順を標準化し、できるところは自動化します。承認が要るものも、誰が承認するかを決めておきます。
      • 利用者には、どれくらいで終わるかを示します。

      サービスデスク

      Service desk

      インシデントの解決とサービス要求の受付で、利用者の入口になるもの。

      • 利用者にとっての単一の窓口です。電話、メール、チャット、ポータルなど、複数の経路で受けます。
      • 技術の知識だけでなく、相手の状況を理解し、気持ちに寄り添って話す力が求められます。
      • 自分で解決できない依頼も受け止め、正しい担当に回します。

      サービスレベル管理

      Service level management

      事業に基づく明確な目標(サービスレベル)を決め、達成状況を確かめて管理すること。

      • 目標は、提供者と顧客の合意として文書にします。これをサービスレベル合意(SLA)と呼びます。
      • 合意は、提供者が一方的に決めず、顧客と一緒に決めます。
      • 数字だけを見ないことが大切です。数字の目標は達成しているのに利用者は不満、というずれが起きます。利用者の体験も確かめます。

      継続的改善

      Continual improvement

      変わり続ける事業の必要に合わせて、サービスと実践を良くし続けること。

      • 中身は9章で扱いました。7つの問いと継続的改善登録簿が中心です。
      • プラクティスの1つであると同時に、SVSの部品の1つでもあります。

      「新入社員のアカウントを急ぎで作って」はサービス要求、「アカウントが作れない」はインシデントです。「毎回作れない原因を調べる」は問題、「アカウントの仕組みを入れ替える」は変更です。言葉を分けると、誰がどの手順で扱うかが決まります。

      教科書ではこう書かれている言葉
      原語平易に訳語の例
      Incident予定外の停止や品質の低下インシデント
      Problemインシデントの原因問題
      Known error / Workaround原因が分かったがまだ直していない問題/しのぎ方既知のエラー/回避策
      Change / Change authority足す・直す・外すこと/変更を承認する人変更/変更承認者
      Standard / Normal / Emergency change承認済み/都度承認/急ぎ標準変更/通常変更/緊急変更
      Service request前もって合意した種類の依頼サービス要求
      Service level agreement(SLA)サービスの水準の合意サービスレベル・アグリーメント
      Impact / Urgency影響の大きさ/急ぎの度合い影響度/緊急度

      12章 約8分

      1つの依頼も、ITILの部品すべてを通って価値になる

      ここまでの部品は、別々のものではありません。1つの依頼を追いかけると、全部がつながっていることが分かります。

      例として、「営業部が、顧客管理のSaaSを使いたいと言ってきた」という依頼を追います。

      部品この依頼で起きること
      機会と需要営業部の「顧客情報を一か所で見たい」という声
      価値(2・3章)ほしい成果は何か。機能(有用性)と、安全に使えるか(保証)の両方を確かめる
      4つの側面(4章)誰が管理するか/データと連携/事業者との契約/申請から利用までの流れ
      原則(6章)価値に着目する(何の成果のためか)、現状からはじめる(今の顧客台帳は何か)
      ガバナンス(7章)個人情報を扱うSaaSの審査方針に沿っているか
      バリューチェーン(8章)エンゲージ、計画、設計および移行、取得/構築、提供およびサポート、改善
      プラクティス(10・11章)サプライヤ管理、情報セキュリティ管理、変更実現、サービス要求管理、サービスレベル管理など
      継続的改善(9章)使われ方と不満を集め、手順や約束を直す

      ITILは「来る前に決めておく」型の集まり

      ITILのプラクティスの多くは、依頼が来てから考えるのではなく、来る前に決めておくための型です。サービス要求管理は依頼の種類と手順を、サービスレベル管理は応える早さを、変更実現は承認の決め方を、前もって定めます。

      前もって決めておけば、急ぎの依頼にも、担当者の判断に頼らず、決めごとに沿って応えられます。ただし、その決めごとは情シスが一方的に作るものではありません。2章の「価値の共創」のとおり、使う側と合意して決め、不満が出たら9章の継続的改善で直します。

      「急いでアカウントを作ってほしい」と言われたら、サービスレベル管理で合意した日数を伝えます。本当に急ぐ必要がある場面なら、その道筋も前もって決めておきます。変更実現の「緊急の変更」と同じ考え方です。

      次に読むもの

      このページは全体の地図です。正確な定義や訳語を確かめたいときは、公式書籍『ITIL Foundation, ITIL 4 edition』の日本語版を見てください。34のプラクティスを1つずつ深めるには、公式のプラクティスガイドがあります。

      用語集

      用語集:原語・平易な意味・訳語の例

      言葉を入力すると、原語・平易な意味・訳語の例のどれかに含まれる用語だけに絞り込めます。

      原語平易な意味訳語の例

      このページは、ITIL 4 Foundation の範囲を学ぶために、独自の言葉で書いた学習用のまとめです。公式書籍の文章ではありません。定義は意味を変えないよう平易に言い換えています。訳語は教材によって表記が異なる場合があります。

      参考:ITIL Foundation, ITIL 4 edition(AXELOS/PeopleCert)。ITIL® は PeopleCert の登録商標です。

      作成:2026-11-01

      運用日誌の解説ガイド|ITIL® は PeopleCert グループの登録商標です。このサイトは非公式の読み物で、PeopleCert・AXELOS とは関係ありません。運用日誌の地図|参考文献と権利表記